カインズ工房でレーザー加工機を使って自作キーボード用のプレートを作成した
遊舎工房さんなどの、レーザーカットサービスを使って、アクリルをカットして自作キーボードのプレートを作ることがよく行われます。 私自身もこれまでは遊舎工房さんのレーザーカットサービスを利用してきました。
カインズ工房では、30分2,500円で、レーザー加工機の時間利用ができるサービスがあります。 材料もカインズホームで購入する以外に持ち込むことができ、手軽に利用することができます。 このレーザーカッターの時間利用サービスを使って、試しに自作キーボードパーツを作ってみることにしました。
データの準備
このサービスでは、データはIllustratorを使うこととなっています。 しかし、Inkscapeで作成したSVGファイルであってもIllustratorで開くことができたため、問題なく使うことができました。
この時注意していたのは、以下の点です。
- カットする線のパスはつなげること
- カットする線の色はRGB: #ff0000 にすること
- カットする線の太さは0.003pxにすること
- (2022/03/13追記)1レイヤーのみにし、かつグループ化も解除すること
使用したファイルは以下にアップロードしています。
2回目の時に問題が発生
意気揚々と、2回目のレーザーカッターを利用した時に、カットとして認識がされない問題が発生しました。 カットではなく彫刻としては認識されているようでした。
Ctrl+A でオブジェクトの全選択をしてみると、「塗りつぶし」の所が「透過(斜線表示)」になっていませんでした。 「塗りつぶし」があるとカットラインとしては認識しないようです。 「塗りつぶし」を「透過」にすると認識するようになりました。
あとからInkscapeのSVGファイルを開き直して、全選択をしてみると、確かに「フィル」が「x(なし)」になっていませんでした。
3回目の時に問題が発生
Illustrator で開くと一部の図形が表示されなませんでした。
表示されたものと差をみていくと、グループ化されていると表示されていないようだった。
グループ化を1つ1つ解除することで、カットラインとして使えるようになりました。
プリント設定の準備
基本的には操作マニュアルの手順通り進めれば、利用できるようになっています。
https://diy-style.cainz.com/pdf/lazerprocessing_manual.pdf
注意が必要だったのは以下の部分です。
- 「5:プリンターの設定をする」の部分にある印刷設定の、幅、高さが、持ち込んだ素材とは異なるサイズになっていて、変更する必要がありました。
- 印刷設定にある、「加工オプション」の「加工モード」が標準以外になっていました(前に使った方の設定)。標準に設定しました。
- Illustratorのプリント画面に、プレビューがあるのですが、ここで適用される方向が期待と異なる方向になっていました。用紙サイズ設定の「自動回転」オプションをオフにすると、正しくなりました。
- Illustratorのプリント画面のプレビューが、プリンターの設定の後も変更されませんでした。しかし、一度プリント画面を閉じて開くと正しく表示されました。
- 「7:材料セット・焦点合わせ・加工開始位置を設定する」にある焦点合わせの作業のやり方を店員から習いました。習わないとわからないです。
- 2回目で利用した時に誤って、焦点合わせのパーツを、機械の隙間に落としてしまいました(店員さんに中を開けてとってもらいました)。焦点合わせの時は、端を使わず、少し中央よりに動かしてから、焦点合わせをするようにしましょう。
- 「9:データ設定」において、余白付きでファイルを作成していましたが、ジョブをドラッグした時点で、余白が取り除かれてしまい、なかなかアクリルの端ぎりぎりで切断されていました。ここで余白が取り除かれるため、ジョブを配置する時点で、余白を考慮して配置する必要があります。
- 材料データベースというところで、ここで色ごとにレーザー加工機の設定ができます。ここにマニュアルの最後に挟み込まれている材料ごとの設定をみて行いました。
- (2022/03/13追記) 排気中に片づけのつもりでJobControlアプリを終了したところ排気が終わらなくなりました。排気終了までアプリで制御しているようで、アプリを立ち上げなおしたところ排気が終了しました。
今回、光のスミホリデーの2mmのアクリル可能に利用した設定は以下の通りです。
- 赤、青両方とも
- パワー: 100
- スピード: 0.8
- Hz: 1000
2回目で問題が
同じ設定にしても切断できませんでした。使用していた三菱ケミカルのアクリライトでした。
以下の設定で切断することができました。
- パワー: 100
- スピード: 0.55
- Hz: 1000
スピード0.6では一部の箇所のみ切断できない(力を加えれば折れるので、使えなくはない)ところがあったので、最終的に0.55にしました。
カットにかかる時間
「9:データ設定」のところに、カットに要する時間が記載されます。私のデータの場合は4分40秒でした。
しかし、このカットを始める前に、「レーザーカットのデータの送信」、「アクリルの設置」、「焦点合わせ」を行う必要があり、データの送信は同一のものを出力する場合には省略できますが、「データの送信」に慣れても3分、「アクリルの設置」、「焦点合わせ」に1分程かかります。
さらに、レーザーカットの後には排気が行われ、材料が取り出せるまでに時間がかかります。さらに切断後の素材のため、いろいろカットした部分がポロポロ落ちるため、取り出して折り曲がらないところに挟み込むまでにも時間がかかります。慣れても1分ほどかかると思います。
よって、1枚あたりの作業は、カット約5分+前後2分で、7分ほどかかる計算になります。すると、30分でできる加工は4枚セット分程度だろうという試算になりました。
今回は初めてだったので、3セット分しか作成することはできませんでした。
次に加工するときに準備したいもの
次に加工する時に準備したいと思ったものは以下のとおりです。
- 完成部品を入れておくケースを用意しておくこと。今回は厚紙を入れた封筒に入れていましたが、折れてしまわないか心配でした。
- 端材を入れる袋を用意しておくこと(スイッチの穴があり、大量に小さな端材が出ます)。
レーザーカットサービスか、時間利用で自分で加工するか
このようにレーザー加工機でどのような生産ができるか見積もれるようになりました。
今ボトムプレート10セット分、トッププレート5セット分を作成したいのですが、そのコストは以下と試算できます。
- レーザ加工機レンタル2時間(16セット分) 2,500円x4=10,000円
- アクリル材料費 アクリルいた透明2mm 300x450mm(3セット作れるサイズ)x5枚(15セット分) = 2,673円+送料
- +交通費
自分で加工する方が若干安くなる試算になりますが、若干に過ぎなく、手間がかなり必要です。 失敗したり、壊してしまうリスクもあります。 今後自分で加工するか、レーザーカットサービスを利用するかは決めきれていません。
今回で加工のためのコストと、失敗の可能性を下げるやり方を得ることができました。 やはりDIYするのは楽しいで、次また自分で加工にトライしてみたいと思います。
キーキャップを好きな色で塗装し、好きなフォントを貼り付けた話
自作キーボード用のキーキャップを自分でスプレーで塗ってみて、自分としてはうまく行ったと思うので、その方法についての記事にします。
ただし塗装によりキーキャップの触感は変わるため、好みが分かれる部分になると思います。塗装後はもとに戻すことは難しいため、記事を参考にする場合には、自己責任の上でお願いします。
Black on Whiteで入手可能なキーキャップ
自分の好みのキートップは、Black on Whiteと呼ばれる、黒い筐体の上に白文字を乗せたものになります。キートップの印刷に使われる昇華印刷(Dye Sub)には、白色はないため、二色形成(Double Shot)で作る必要があります。二色形成は金型から作る必要があるため、あまり多くの文字デザインのものは出回っていません。
現状購入可能で良さそうなものは以下の3つになります。
課題感
既存のキーキャップではなく、塗装&シール製作に手を出そうとしたのは以下のためです。
- Black on Whiteのキーキャップは昇華印刷で実現できないため、種類が限られること。
- すらっとした文字がキーに乗ることがかっこいいと思うため、既存のBlack on Whiteの二色形成のキーキャップのフォントは若干太いと思い、好みではないこと。
- キー配置が特殊なため、Cherry Profileなどキーの高さが行ごとに異なるキーキャップでは、特定の印字のキーが異なる行のキーとして作られています。そのため、正しい行のキーキャップを使用することを優先した場合、異なる印字のキーを配置する必要が出てきます。それはかっこよくないと思ったこと。
この課題感から、自分でキーキャップを塗装し、キートップシールを作ることにトライしてみました。
塗料の選択
キートップの塗装には、タミヤカラーマットブラックを使用しました。光沢のない黒が好みであるため、この色はとても気に入りました。

タミヤ スプレー No.06 TS-6 マットブラック 85006
- 発売日: 1983/11/10
- メディア: おもちゃ&ホビー
自作キーボードに使っていた安いOEMキーキャップを、タミアカラーマットブラック、つや消しクリアで塗装したら、思いの外質感良い塗装になった。自分で使うものならこれで良さげ。 pic.twitter.com/oqVsxNzuXG
— Atsushi Morimoto (@74th) 2021年2月1日
この上に、クリヤカラーを塗装することで、傷に強くすることにしました。この塗装には、以下のアサヒペン高耐久ラッカースプレーを使用しました。
塗装の仕方
塗装の順序は以下になります。
- マットブラック塗装1回目
- マットブラック塗装2回目
- シール貼り付け
- クリヤカラー塗装1回目
- クリヤカラー塗装2回目
シールの上からクリヤカラーを塗装することでシールごと傷に強くする効果があると考えました。
塗装にあたっては、以下のようにダンボールで塗装ブースを作りました。ダンボールの板にキーを斜めに貼り付けて、ダンボールと台ごと塗装することにしました。キーキャップの下面を塗ることができませんが、効率的に塗ることができます。
キートップシールの製作
キートップのフォントには、気に入っていて自分のUbuntuPCのUIフォントに指定しているMontserratを使用しました。
キートップシールの製作には、「透明台紙」「白インク対応」「任意のカットパス」「光沢なし」「安価」のシール印刷プロに印刷を依頼しました。入稿データの作成あたり、Illustratorを持っていないため、InkscapeのSVGファイルで入稿できないか相談させていただき、受け入れていただけました。
完成したシールの以下のようなものです。
日本語キーボード、テンキー、2Uのキーにも対応したシールになっています。調子に乗って、白と黒の2種類を作りました。Montserratはやっぱりすらっとしてかっこいいです。
ちなみに費用は白8枚、黒4枚の少部数製作で5,000円程かかりました。
Boothにて、数は少ないですが販売を開始しています。
キートップシールの貼り付け
シールに指紋がつくと、透明のシールのためなかなか目立ちます。きれいに貼り付けるために、ピンセットを用いて貼り付けを行いました。
シールの貼り付ける位置として、「キーの側面」と「キーの上面」の2種類があると思います。
今現在は「キーの上面」に貼り付けたキーキャップを使っています。キーキャップの上になにかものが乗っている感触があるため、人に酔っては抵抗があると思います。いまのところ自分としてはそんなに問題に感じていません。しかし、次のキーキャップの塗装に手を出したときには側面にしてみようと思います(1回目は側面に貼り付けていたが、ピンセットを用いていないときの為きれいではありませんでした。2回目は、実験のため上面に貼り付けて見た形です。)
傷ついて剥がれない?
指で触る部分のため、爪などで傷がつくと塗料が剥がれる心配があります。最初クリヤーカラーとしてタミヤカラースプレーを使い、クリヤーカラーはあくまで薄く塗装していましたが、1週間ほどで一部のキーの端の塗装が剥がれることが発生しました。そのため、高耐久ラッカースプレーを使い、わりと厚めに塗るようにしました。これにより、ラッカースプレーの感触が強くなりますが、自分としては問題ない範疇という結論になりました。
このキーキャップを2週間付けて見ていますが、今の所塗装が剥がれることは発生していません。
見栄え悪くない?
写真で見るとあまりシールとキーキャップが一体になっていないように見えますが、目で見た場合にはあまりそれは気になりません。白インクが非常に映えて、よい感じです。
若干シールの段差がある部分に埃が入るように思いますが、エアダスターでたいていはきれいになります。
他の塗装方法は?
プラスチックを染めることができる液体染料を使うと、より傷に強く確実に染めることができると思われます。
まとめ
Black on Whiteの、任意のキー配置の、スラッとしたフォントのキーキャップを作ることができて、非常に満足しました。
近い思想を持った方向けに、キートップシールを販売しております(残り4つほど)。
今回使用した自作キーボード Sparrow62 はBoothで販売しております。
自作キーボードとMagic Trackpadを一体化させたSparrow62
私にとっての、キーボードのエンドゲームにでたどり着きました。
写真自体はTwitterで挙げてきましたが、改めて工夫している点をまとめた記事になります。
今回の改修で以下の特徴を持つ自作キーボードになりました。
- 60%キーボード(ファンクション、テンキーなし)
- Column-Staggeredの配置(キー配置が縦に揃っている)
- 左右分離
- Cherry MX互換スイッチ対応
- 薄型スイッチ Kailh Choc v1/v2 対応
- Kailhソケットを使い、交換が可能
- 薄さを優先し、Pro Microはキーボードの横に配置
- キーの変更が容易なVIAに対応
- Magic Trackpad 2と一体型プレート対応し、トラックパッドをキーボードと同じ高さで使える ← New
ソケットに対応していることで、様々なスイッチを気軽に試して探求することができます。
Trackpadがキーボードと同じ高さにあることで、Trackpadを理論上最低限の指の移動で使用できるようになります。
ここまでの背景
- Lily58を使っていた
- MacBookProに右手キーボードを乗せてTrackpadと一緒に使っていた。トラックパッドが低い位置にあったため、薄さが重要だった。
- Kailh Choc v2が試したくなって、Sparrow62を設計した
- 薄さ優先で、ボトムプレート、トッププレートを廃したキットにした
- 欲がでて、Cherry MX互換スイッチにも対応した
- Magic Trackpad 2を使うようになった(MacBookProをクラムシェルモードで、また自作PCで)
Lily58に追加4キーを行ったSparrow62ですが、左手に2キー追加したことで、右手からキーの数を減らしても良いことに気づきました。
左右分離キーボードで、右手のキーボードは幅を小さくしたほうが、マウス/トラックパッドまでの移動距離が短くてよいのでは?!とひらめいた。自分の場合、右手のこのあたり使っていない。 pic.twitter.com/VnaWY2neKE
— Atsushi Morimoto (@74th) 2020年12月27日
そして、Trackpad 2とSparrow62のボトムプレートを兼ねたアクリルプレートを制作し、一体化させることができました。
自分の #自作キーボード Sparrow62をMagic Trackpadと完全一体化させることに成功した!! pic.twitter.com/aL1gzroM4l
— Atsushi Morimoto (@74th) 2021年1月23日
これを使うには?
基本のキットには、このプレートは含まれていません。
当初は薄さを優先すること、Kailh Chocスイッチはトッププレートと高さの点で干渉しうる点から、トッププレート、ボトムプレートを廃したキーボードキットにしています。そもそもKailh Choc v2を使うときには使っていないものを付属するのは違うと思ったからです。
一方、スイッチの高さのあるCherry MX互換キースイッチを使う場合には、トッププレートがないとしっかりと固定されません。そのため、トッププレートだけは付いたバージョンも用意しました。
そして、今回のMagic Trackpad 2への対応は、あまりユーザが多くないと考え、プレートを注文するためのデザインファイルを提供し、遊舎工房のレーザーカットサービスを利用して注文できるようにしました。
その他、組み立てに必要なものについては、ビルドガイドに記載しています。
できるスタイルは?準備が必要なものは?
このキーボードは以下のスタイルで使うことができます。
薄型キースイッチChoc v1/v2を、ボトムプレート、トッププレートなしで使う
Choc v1は5ピンのため、安定性に問題がないとおもわれます。Choc v2も多少高さがありぐらつく場合もありますが、大きくは問題ないと思っています。
基本セットを購入ください。
薄型キースイッチChoc v1/v2を、トッププレートと一緒に使う
Choc v2はv1よりも高さがあり、安定性に問題を感じる場合、トッププレートを使うと、多少安定します。しかし、私自身は使用していません。
基本セット購入後に、以下のデザインファイルで遊舎工房のレーザーカットサービスをご利用ください。なお、ネジの用意はなくて大丈夫です。
https://github.com/74th/sparrow62-buildguide/blob/master/additional_plate/Sparrow62_top_Laser_A4.svg
薄型キースイッチChoc v1/v2を、トッププレート、ボトムプレートと一緒に使う
トッププレート、ボトムプレートx2を使うことで、自作キーボードとしてのパッケージらしくなります。しかし、私自身は使用していません。
基本セットを購入し、遊舎工房のアクリルレーザーカットサービスをご利用ください。
その他、必要な部品、アクリルレーザカットに必要なデザインファイルは以下を参照ください。
Cherry MX互換キースイッチを、トッププレートと一緒に使う
Cherrry MX互換キースイッチを使用する場合には、高さがあるため、トッププレートがあると非常に安定します。
トッププレート付きのセットを購入ください。トッププレート付きのセットに、スペーサー、ねじを含んでいます。
ボトムプレートも欲しくなった場合には、遊舎工房のレーザーカットサービスをご利用ください。詳細
Cherry MX互換キースイッチを、トッププレート、ボトムプレートを一緒に使う
トッププレート、ボトムプレートx2を使うことで、自作キーボードとしてのパッケージらしくなります。私自身は、テーブルとの安定性を高めるために使用しています(テーブルとトッププレート間は「魔法テープ」を使っています。
基本セットを購入いただき、遊舎工房のレーザカットサービスを利用して注文ください。デザインファイルは以下になります。
さらに必要なものについてはいかに記載があります。
Cherry MX互換キースイッチを、Magic Trackpad 2と一体化して使う
記事の最初で紹介した、私の現在のスタイルです。
トッププレート、ボトムプレートは遊舎工房のレーザーカットサービスにて注文ください。デザインファイルは以下になります。
必要なものは以下にまとめています。
結局どれを買ったり用意すればいいの?
薄型キースイッチChoc v1/v2を試したい場合、基本セットを購入ください。Cherry MX互換スイッチを試す場合、トッププレートつきを購入ください。
その後、ボトムプレート、トッププレートがほしい!となった場合、遊舎工房のレーザーカットサービスを利用して、作るのがおすすめです。
はんだ付けしたくない場合
はんだ付けを私が行ったものも販売しております。キースイッチとキーキャップとケーブルを買うだけですぐに使うことができます。
すぐ動くものが欲しい場合
以下の組み合わせの、完成品を用意しています。私が実際に使っているものと同じ構成になります。
- Kailh Speed Switch Copper(タクタイル、ゲーマー軸)
- DSA キーキャップ
終わりに
Magic Trackpad 2、あの1/6くらいの面積で良いのに。
Trackpad一体型を試す人や、そのような自作キーボードキットが増えると楽しいと思っています。