USBデバイスの電源保護に、CH217、CH213を使う

注意、この記事は工業製品の電子回路設計のプロではなく、アマチュアの電子工作エンジニアが執筆しています。世の中には紹介するICより良いICがあるかもしれませんが、私にとって良さそうなものを見つけたとして、記事にしています。

tl;dr

  • USBデバイスの工作をしていて、PC側やMCUの電源保護に、過電流防止にリセッタブルフィーズや、逆電流防止にダイオードを入れたりするよ。
  • CH213、CH217を使うと、過電流防止と、逆電流防止(CH213のみ)、過熱保護が1つの部品でできるよ。
  • CH213を使うと、500mAまで流せるよ。ESP32には足りないが、だいたいのMCUには足りそうだよ。
  • CH217を使うと、ISETに繋ぐ抵抗で流せる電流量を変えられて、さらにオンオフスイッチ機能も付いているよ。ただし、ENのプルダウンと、ISETの抵抗は必須だよ。

USBデバイスの電源保護

マイコン開発ボードや自作キーボードなどの、USBデバイスを作っていますが、公開されている回路図を見ると、USB電源保護の措置が取られていることがあります。 主に2つのことが行われているようにうかがえます。

  • 逆電流防止: USBデバイスからUSBホストに、誤って電流を流さないようにする。
  • 過電流防止: USBデバイスが過剰に電流をとってしまい、マイコンに過剰に電流を流してしまったり、USBホストに影響を与えないようにする。

例えば、Raspberry Pi PICOでは、USBのVBUSからレギュレータの間にはMBR120VLSFという1A流せるショットキーバリアダイオードが入っています。

Raspberry Pi Pico Datasheet

https://datasheets.raspberrypi.com/pico/pico-datasheet.pdf

また、元祖のSparkFun社のProMicroにはUSBのVBUSからMCUに繋がれるVCC、レギュレータの間には500mAのリセッタブルフィーズがはいっています。

Pro Micro 5V/16MHz — スイッチサイエンス

https://www.switch-science.com/products/1623

私の最近作る開発ボードにはフューズかダイオードを入れるようにしています。

ただ、ショットキーバリアダイオードを入れるにも手に入りやすいものだと電圧降下が0.5Vほどあって辛かったり、リセッタブルフィーズも1A流せるものはサイズが大きかったりします。

私の場合、ショットキーバリアダイオードには電圧降下が340mVで1A流せるPMEG2010ERを、リセッタブルフィーズにはなんかTaoBaoで安かった1.1A流せるKT6-1100SMDIを使っていました。

www.lcsc.com

自恢復保險絲KT6-1100SMDI 1812-110 1.1A 6V 20只-Taobao

https://world.taobao.com/item/wap/555353746767.htm

WCHの製品にも使われる CH213、CH217 を調べる

WCH-LinkEのクローン品を作ろうとWCH-LinkEの回路図を見ていたとき、CH217Kという部品が使われているのに気づきました。 どうやらUSB電源保護を行ってくれるICであることがわかりました。クローン品を作る時にはこの部品は省略することにしました。

現在のところ中国語のサイト上にしか紹介ページはありませんが、データシートは英語のものができています。

CH217 Datasheet

https://www.wch-ic.com/downloads/CH217DS1_PDF.html

CH217は、USB電流制限スイッチICとして以下の機能があるようです。

  • 400mA-2.7Aで設定可能な電流制限
  • 供給電圧が一定以下になったとき電源出力をシャットダウンして、低電圧による誤動作を防止
  • 熱くなったときに電源出力をシャットダウンする過熱保護
  • スイッチ制御

ダイオードとしての機能はないようです。試しにVINとGND、VOUTとGNDを逆に繋いでみたところ、非常に過熱しました。

また、近い機能のICにCH213があることを知りました。こちらは英語のサイトと、データシートがあります。

5V*0.5A ideal diode chip – CH213 - NanjingQinhengMicroelectronics

https://www.wch-ic.com/products/CH213.html

CH213は5V0.5Aの理想ダイオードとして、以下の機能があります。

  • 逆電流保護(ダイオード
    • 200mA で電源降下32mVと降下が低い
  • 熱くなったときに電源出力をシャットダウンする過熱保護
  • 1.3A の電流制限

CH334というUSB Hub ICのデータシート中に、CH217をDownstream(デバイス)側の電源保護に、CH213をUpstream(ホスト)側の電源保護に使う例が登場しています。

USB HUB Controller – CH334/5 - NanjingQinhengMicroelectronics

https://www.wch-ic.com/products/CH334.html

CH213、CH217 を購入する

CH213、CH217を購入する手段として、見つけた当初はTaoBaoしかなかったのですが、最近AliexpressのWCHのオフィシャルショップで取り扱われるようになりました。

100Pcs/Lot CH213 5V*0.5A Low Voltage Drop Diode Chip - AliExpress

https://www.aliexpress.com/item/1005005619632155.html

100/500Pcs/Lot CH217 USB Current limiting Power Distribution Switch Chip - AliExpress

https://www.aliexpress.com/item/1005005619823491.html

2023/08/13現在、別途送料が717円ほどかかりますが、CH217が861円/100個、CH213が574円/100個と、あまり高くない価格で買うことができます。 自分の作成するデバイスに組み込んでみたく、購入してみました。

CH213を使ってみる

CH213を単品で使ってみました。確かにMCUを起動する分には使えそうな500mAで、試しにUSBはんだごてを繋いでみると、電流制限されて動作しないのを確認できました。

しかし、これをESP32-C3-WROOM-02を使ったデバイスの電源に入れてみたところ、電源が不安定になることが確認されました。ESP32のWiFiを駆動するには500mAでは足りないと言うことなのかなと思っています。

CH32V003を駆動するために組み込んでみたところ、特に問題なく利用することができました。

CH217を使ってみる

CH217を単品で使ってみました。試しにUSBはんだごてを繋いでみると、電流制限されて動作しないのを確認できました。

(この時はダイオード機能があるとおもってツイートしていますが、後で調べるとなさそうでした)

最初ENと、ISETは何も接続しないフローティングの状態で使えたりしないかなと試してみましたが、使えませんでした。 ENは確実にプルダウンする必要があり、ISETはGNDとなんらかの抵抗を繋ぐ必要があります。

ISETに繋ぐ抵抗の値として、データシートには22kΩで最大の2.75A、30kΩで2.0A、45kΩで1.0Aと記載があり、これをプロットしてみると直線になりそうなので、このグラフを見て抵抗を決めれば良いことがわかります。

ISETの抵抗と流せる電流

感想としては、必ずISETの抵抗が必要なのが部品点数が増えて面倒な感じがしますが、

このスイッチとして使える特性は面白く、これを使って、USBデバイスの電源を自動でオンオフするようなものが使えそうと思いました。

まとめ

CH213、CH217はUSBデバイスの電源保護のために作られているのもあって、USBデバイスの製作に活躍しそうです。そして、お安いのも助かります。

このあと実際に、時々フリーズするIoT機器を12時間ごとに再起動させるCH217を使ったアダプタと、USBハブを製作してみています。これは後日記事にします。