2024年3月2日に、過去最大規模の自作キーボードオンリーの即売会「キーボードマーケットトーキョー(通称:キーケット)」が開催され、私自身が作っているキーボードキットをもって参加してきました。
各商品のリアクションの後に「ブースの準備で役立ったこと」「その他の反省点」「さすがキーケットと思ったこと」を記載しています。各商品の反応が長くなってしまったので、そちらを先に見ていただいた方が、出展者や企画者への参考になると思います。
目次
販売したもの
こちらが当日販売していたもののまとめになります。SparrowDial、SparrowG21は初お披露目になります。Sparrow60Cは天キーで展示していましたが、販売は初めてになります。
過去のお品書き記事はこちらになります。
ブースの様子
キーケットでは、1卓をまるっと使うことができ、広々としたスペースで展示することができました。
マクロパッド含めて5台のアイテムを展示し、そのうち4台は操作を直接試せる形で展示していました。
各商品へのリアクション
SparrowDial
今回M5StackCore2と、M5Dialをトラックパッドとして使うSparrowDialを展示しました(この記事もSparrowDialを使って執筆しています)。
やはり、M5StackCore2と、M5Dialのタッチパネルの操作性がよく、まずその思い通り入力できることに驚かれる方が多くいらっしゃいました。実際にAnrdoid内のカーソルを操作できることと、デバイス自体に今行っている操作の軌跡を表示する機能があったため、触るだけではなくデバイスからリアクションを得ることができて、操作している感じがより伝わったように思います。
そして、M5Dialのダイアル操作によるスクロールを体験して貰うと、その感触の面白さを実感して貰うことができました。M5Dialを知らない人からするとぐりっと回せること自体に驚かれることも多かったです。
さらにM5StackのCore2ととDialのデバイスがかわいらしく、それぞれの色に合ったキーキャップを付けていたこともあり、ものとして素敵との言葉もいただきました。ケースもデバイスも組み合わせたものでありながら、良いものになったのは、M5Stackの商品が良いのと、自作キーボードによいパーツがあるからだと改めて思いました。
多かった質問は以下のような所でした。
- このキットには何が含まれていて、何を用意する必要があるのか。
- 左側のShiftやTabキーの1列がないが、どうやって操作するのか。
- 自分はZを、他のキーと同時押しするとShiftとして動作するようにしてあること。
- 下部のキーの数が豊富なため、そちらに割り当てることもできること。
- そもそも自作キーボードはキーマッピングを手軽に変えることができる文化のため、すきなようにチューニングできること。
- これを自作キーボードが初めてでも組み立てることが可能か。
- M5Stackのデバイス(ESP32)をつかってどうやってQMK Firmwareに対応したの?
- M5Stackのデバイスを、キーボード側から指示して絵や音をだすなど、もっと活用することはできると思う?
- できると思う。QMK FirmwareにはI2Cライブラリがあるので、今はI2CのReadしかしていないが、WriteしてM5Stack側に送信することは可能。
私自身のキーマップを展示しておくとより利用するイメージが得られたのかもしれません。
現在、こちらのキーボードは予約販売という形でboothにて取り扱っています。
なお、M5StackCore2、M5Dialに入れたファームウェアはこちらのGitHubリポジトリで公開しています。
公開しちゃっていいの?という声をいただきましたが、ノウハウを公開、共有するMakerムーブメントが面白く思っており、この公開で他の方が面白い開発を発表されるならば嬉しいと思って、公開、共有しています。キーボードの基板データは公開しません(これはある程度私の意匠が入っていると思っている)が、こういうデバイスファームウェアは公開、共有したいと思っています。一方、他の方がプログラムを公開しないことも自由だと思っています(GPL等の利用するライブラリのライセンスは守りましょう)。
なお、展示品は以下のようなセッティングでした。
- SparrowDial with M5StackCore2
- SparrowDial with M5Dial
- Case: GH60互換 60%キーボード用プラスチックケース(半透明ブラック)
- Switch: Durock POM Piano (Linear)
- Cap: PBT Double-shot Black Yellow CSA Profile
Sparrow60Cと、StickPointV
ジョイスティックモジュールをQMK Firmwareで使えるようにチューニングしたStickPointVモジュールと、それを搭載したキーボードキットSparrow60Cを販売しました。
Sparrow60Cで操作感を体験して貰いつつ、制作者側の人にはトライしてみるためにモジュールを買っていただくことができました。
以下のような質問や意見をいただきました。
- 過去に同じジョイスティックモジュールをチューニングしたが、このようにはできなかった。
- ThinkPadのTrackPointよりはかなり癖があるが、使える。
- 底面にGroveソケットが付いているが、組み込み上ない方が嬉しい。
- HHKB StudioのTrackPointが遅くて困っているので、ダッシュモードは良さそう。
- (金属ケースの使用例を見て)やはり汎用ケースが使えるのは、品質の高いものが気軽に使えて良いね。
- QMK Firmwareで使える他のモジュールの互換仕様なのは良いね。このようなデバイス増えて欲しいね。
- デバイスをどうやれば組み込むことができるのか?
- 印刷していったファームウェアガイドを見せる。
SparrowDialと並列に展示したためか、トラックパッドの方が多くの方が惹かれているようでした。それでも、このモジュールとして提供していることに興味を持っていただく方が多くいたのは、キーケットならではでした。
これらは現在もBoothにて販売中です。
なお、展示品は以下のようなセッティングでした。
- Sparrow60C (1)
- Case: GH60互換 60%キーボード用プラスチックケース(半透明ブラック)
- Switch: Durock Black Lotus (Linear)
- Cap: Drop MT3 Skiidata
- Sparrow60C (2、実使用版)
- Case: Wholesales GH60 Anodizing Aluminum CNC Case for 60% Mechanical Gaming Keyboard Compatible GK61x GK64x Pok3r
- Switch: Kailh Deep Sea Islet (Silent Linear)
- Cap: PBT Keycap Double-shot XVX Profile Purple Black
SparrowG21
自分がアクションゲームを快適にプレイしたいがために作ったレバーレスアケコン(ジョイスティック付き)を展示、販売しました。メインの客層ではないだろうと思いつつ、体験できるキーボードの後ろで展示していました。しかし、そちらについても教えてもらえますかと、多くの方に声をかけていただき、触っていただきました。そして、実際に購入していただくことができました。
いただいたコメントや質問は以下のようなものでした。
- これは何に使えるのか?
- GP2040-CEを使っているので、PCとSwitchでゲームコントローラーとして使える。
- パームレストが必要だけど、使いやすそう。
- スイッチの感触が良い。
- ケースがあるのでものとしての一体感があり、良さそう。
同行者と来ていた人(おそらくもう一人はキーボードへの興味は薄いかも)に、こんなものがあるよ気にならない?と声をかけていたことが複数回ありました。
なお、展示機のセッティングは以下の通りでした。
- SparrowG21
- Case: GH60互換 60%キーボード用プラスチックケース(半透明ブラック)
- Switch: Durock Ice King T1 (Tactile)
- Cap: アケコンキーキャップ、TALP KEYBOARD XDAブランクキーキャップ
SparrowTV
自分の家のTV横PCに最適化したマクロパッドが作りたいと思って作ったSparrowTVを展示しました。iPhoneケースに収めたマクロパッドを実際に手に取ってもらい、手にフィットするマクロパットであると体験してもらえました。一見してわからない「このボタンを押すと、私の家のTVの電源が付く」と伝えると、何ソレ!?と驚いてもらえたのも良かったです。
以下のようなコメントや質問をいただきました。
- Twitterで見たことある!
- すべてのTVに対応している?
- プログラムで、リモコン信号を読み込むモードを使って、CircuitPythonのintの配列がコンソールに出力されるので、それをキーマップのプログラム内に記述することで対応できるよ
- iPhoneケースはやはり持ちやすいし、かっこよい。
- こういうおもしろデバイスは好き。光るところも良い。
Boothでの販売も開始しました。今更ながら未使用の実装済み完成品がみつかったので、そちらも購入できるようにしてあります。
なお、展示機のセッティングは以下の通りでした。
- SparrowTV
- Case: 100円ショップ Seriaで買った裏面が透明のiPhone SE第2世代用ハードケース
- Switch: Kailh Choc Crystal Red(薄型Linuear)
- Cap: Kailhロープロ無刻印キーキャップクリア
RP2040手はんだ実装挑戦ProMicro型開発ボードキットと、RP2040手はんだ実装指南ガイド(無料配布)
ひとつだけ電子工作イベントで出していた開発ボードを出展しました。RP2040が使いこなせるか躊躇している方を後押しするつもりで持っていきました。難しそうと思いつつも挑戦してみたいという方が現れたのが嬉しかったです。
無料配布で「RP2040手はんだ実装指南ガイド」を作っていましたが、無料配布の旨を効果的に展示できていませんでした。RP2040のマイコンが気になる方にお渡しして、受け取って貰っていました。
Boothでの販売は継続しております。
ガイド自体はこちらで公開しております。
ブースの準備で役立ったこと
体験可能な形での展示
今回のメインの展示はポインターデバイス付きキーボードであったため、実際に入力を試せる形で展示することをめざしていました。しかも、デバイス自体も4つあります。
これには、Androidタブレット(Kindle Fire HD)と、セルフパワー対応のUSBハブ(Relay Switch Hub)と、モバイルバッテリーを組み合わせることで実現しました。
ただし、USBハブが自作のもののためか、時々動かなくなることがあり、最後の方ではAndroidタブレットに直接USBを繋ぎ替える形で対応しました。今後は市販のUSBハブを利用しようと思います。
よく使われる市販品をオプションとして販売
SparrowDialは、M5Dialを収める都合上、TALP KEYBOARDさんや遊舎工房さんで扱われているPoker/GH60互換プラスチックケース専用品でした。そのため、このプラスチックケースを仕入れておき、こちらをオプション品として販売していました。多くの方がこのケースも一緒に買われていきました。すぐに使えるケースということで、需要があったようです。
Booth販売誘導カード
もともとは「もし売り切れるものがあったらBooth販売に誘導したい」という下心があり、Booth販売ページのQRコードを書いたカードを用意していました。
#キーケット で準備して良かったもの、Booth販売誘導QRコード。売り切れちゃったらこちらに誘導したいという、邪な気持ちで用意したけれど、今悩んでいるという方にもお渡しできたのがよかった。
— 74th (@74th) March 2, 2024
SparrowDialの方は、ありがたいことに用意した数が売り切れて、こちらのお渡しになっていた。 pic.twitter.com/LbmrKRgl36
確かにSparrowDialは13時半には売り切れてしまって活用できたのですが、それ以外にも高額な商品なこともあり、まだ悩んでいると言う方にカードとい持ち帰って検討して貰うために渡すことができたのは良かったと思っていました。実際にまだ購入に繋がってはいませんが、そのようなつながりが持てたのは良かったように思います。
Squareによるクレジットカード決済
Squareによるクレジットカード決済を導入していました。商品が高額なこともあり、現金よりもクレジットカードで扱われると嬉しいだろうと用意していました。実際に7割くらいはクレジットカード、iD、QuickPay、交通系ICでの決済を選択されていました。ただ、キーケットの参加者だけあって、現金も用意してくれているようでした。ただ、1万円札で1,800円の商品を買われる方もやはりいらっしゃったので、おつりの準備は必要でした。
その他の反省点
自作キーボードに関するイベントということで、今まで作って面倒くさがって販売までこぎ着けていなかったものを、改めて販売にもっていったため、かなり商品の種類が多くなっていました。その結果、目移りすることになったり、性格の違う商品を説明したりと、かなり忙しくなってしまいました。
他のブースを訪問することがほとんどできませんでした。ブースには家族(妻)に協力してもらっているとはいえ、商品の種類が多く、常に複数の説明をしている状態が続いていました。しかし、多くのアウトプットの成果を展示いただいた場だったため、中座させてもらってでも、回る時間を取った方が良かったなと思いました。最後15分間まわりのブースをみていましたが、予定していたブースを回りきることができませんでした。
準備不足もありました。展示した商品をそれぞれ説明するカードをその場で作っていました。また、Squareへの商品の登録を直前まで行っており、開場前に出展者同士で交流することができませんでした。他のブースは、出展者入場から開場まで1時間以上の十分な時間が合ったためか、挨拶されている光景を目にしました。
スペースが、一般的な同人誌即売会の半卓ではなく、1卓あることは認識していたのですが、1卓用のサークル布を用意していませんでした。なので、その分不格好になっていたように思います。やはり素敵なサークル布を用意して参加されている方もおり、私もそろそろイベント参加回数10回超えているのだから用意しないとと思いました。
さすがキーケットと思ったところ
キーケットでは、本当に多くの「コミュニケーション」をすることができました。展示されているのを眺めて通過するのではなく、高い商材なのもあって、話を聴いて下さる方が多くいました。特に自分のブースが操作体験をしてもらう作りにしてあったのもありますが、実際に多くの対話がうまれていて、参加者にも体験しに来よう、話を聴いて面白がろうというマインドで参加されているのを感じました。これは流石キーケット、自作キーボードのコミュニティという感じです。
また、商材がそこそこ高額なのもあって、手軽に購入できるものではありません。おそらく、2、3台くらいしか売れない、上手くいったら複数台売れるかもくらいのマインドでいましたが、SparrowDial、StickPointVは準備した数(それぞれ6)が完売し、その他の商品もそれぞれ2つ以上購入いただきました。来場者もある程度高額であることは承知で、何か良いものを見つけて購入しようというマインドで参加しているように感じました。
自作キーボードを作っている方の参加もあり、StickPointVや、M5Stackのデバイスの組み込みについての会話も多く発生しました。人の作ったものを批評的に見るのではなく、よりよいものを作った人の話を聴きたいと言うマインドで参加されている方が多くいるようでした。
事前のお品書きの共有ツイートにも、多くの出展者がリツイートしてくれて、嬉しくなりました。そのお品書きツイートで、参加者の熱が高まっているのを感じました。
お品書きのまとめ記事も作成されていて、どういった展示をされるのかわかりやすい状況になっていました。
DaihukuさんにYouTubeで操作缶とか丁寧に紹介していただいたのも、凄く嬉しかったです。それで来訪いただいた方もいらっしゃったように感じます。当日も、わざわざ触りに、写真を撮りに来ていただきました。
キーケットの写真 274枚です!
— Daihuku (@Daihuku0015) March 2, 2024
ぜひみてください😊https://t.co/2IStqfHCiq
少々ピントが合っていないものもあるけどお許しを🙏
おそらく、私の回りきれなかった当日の様子が動画で配信されると思うので、それを凄く楽しみにしています。
まとめ
私個人としては、非常に自分が面白いと思って作ったものを共有できて、さらに所有してもらえる良い場だったなと思っています。出展者の熱の高さもありましたが、来場者の質が非常に高かったように感じています。実際に購入のアクションまで繋げてくれた方が多くいたことも嬉しく、この活動のやりがいに繋がりました。
今後も面白く実用性のあるデバイスを作って、キーケットの場で共有することができたら嬉しいです。