tl;dr
- ESP32-C3-MINI-1 モジュールは、技適通っていて、ProMicroのように小さいガジェットに使えるけど、リフローでないと実装が難しいよ
- アリエクで$20以下で買えるプリヒーターがリフローに使えたよ
- ステンシル、フットプリントは Espressif の KiCad ライブラリがそのまま使えたよ
- 位置合わせ用の穴を用意したら位置合わせが楽だったけど、たぶんこのサイズなら目視でもできそうだよ
※ ESP32-C3-MINI-1 ではProMicroサイズの横幅までの実現は難しい(横幅が2.54mm程度大きくなる)ので、記述を一部修正しました。
ESP32-C3-MINI-1 とは
ESP32 シリーズの RISC-V の安価なチップとして、ESP32-C3シリーズがあります。
WROOMではなくMINIタイプのモジュールは非常に小さいため、ProMicroのように小さい開発ボードが好きな私は使ってみようとしていました。 また、MINIタイプのモジュールで技適認証を取得しているのは、2023/06/11 現在は ESP32-C3-MINI-1 しかありません。
一方、WROOMとつくモジュールと異なり、裏面のランドで実装する形になるため、はんだごてでの実装が難しいです。 ESP32-C3-WROOM-02 もはんだごてでの実装をしていたのですが、熱の加えすぎか壊してしまうことがありました。 かつてプレヒーター、ステンシルを使わずに ESP32-C3-MINI-1 モジュールの実装にトライしていましたが、上手くいきませんでした。
(以下は過去のフライパンリフロー時のツイートです)
ESP32-C3-MINI-1-N4 のフライパンリフローにトライ。クリームはんだの量を確認するために、モジュールなしでやってみて、その後モジュールを乗せてやってみるも、認識しない。。。 pic.twitter.com/kXMMmncupd
— 74th (@74th) May 28, 2022
リフロー環境を整えて、再度 ESP32-C3-MINI-1 に挑みたいと心に思っていました。
安価なプリヒーターがアリエク出回る
小さく安いプリヒーターといえば、MHP-30というツールが知られていました。USB-PD で給電して、温度調節もできて作りも良さそうなのですが、1万円以上するため、手軽に試してみようという製品ではありませんでした。
最近アリエクで安価買えるプリヒーターが出回るようになりました。
アルミのPCBで作られ、筐体も3Dプリントと、PCBで作られています。 しかし、USB-PDで給電でき、温度調節も可能となっています。
こちらを手に入れてみました。
私の手に入れたものは、内部のネジが1個はずれているものでした。 他のネジもきつく締まっているものと緩いものが混じっていて、全てのネジを外して組み直したところ、しっかりとしたものになりました。
ねじ頭が飛び出している問題
うちにも来た!
— 74th (@74th) May 31, 2023
来ないかと思って、もう1個注文したけど。 pic.twitter.com/Slu8EwPWfV
このツイートの写真の通り、商品画像と異なり、最近のロットは天面が平らになっておらず、ネジが飛び出しています。
早く手を出した方は商品画像通り平らになっているようです。
本当はツライチなんです、、、
— たなかまさゆき (@tnkmasayuki) May 31, 2023
製造ロットによってネジまちがっているのがまざっているので、焼肉しているのとかがネジでっぱっています pic.twitter.com/c5eY9CHo4g
私の所では、とりあえず M2 であれば低い頭のネジがあったため、これに取り替えました。 これでもネジの上にPCBを置いても充分加熱されるかはまだ検証していません。
プリヒーターの頭ネジ問題、M2なら低いのとスペーサーがあったので置き換えました。(3枚目が元のやつ、リンクが使ったネジの販売ページ)https://t.co/sSKopsQF7R pic.twitter.com/IF2lg2w83W
— 74th (@74th) June 1, 2023
プレートを皿もみした方もいるようです。
例のリフロープレート、飛び出て邪魔なネジを交換してみた。皿ネジをかなり短めにカットしつつ、皿部分をせこせこやすりがけして薄くしてみた。プレートもキリもみしたので見事にツライチに🙌 pic.twitter.com/l4t2bQcrpN
— ShoooGO (@show555) June 7, 2023
使い方と、分解時の問題
この使い方は、背面についている2つのボタンを同時押しすると、加熱が始まります。
最初 45W PD電源に繋いでいましたが、電源がリセットされる状況が発生し、60W PD電源に交換して使っています。 200度まで3分くらいで上がるように思います。
分解して組み立てた後に一度 Err という表示になってしまったのですが、これはアルミ背面の温度センサ(なぜか熱伝導テープで覆われています)の配線捻ってしまい、2線が短絡した時に発生しました。この部分を短絡しないように直したところ、再度加熱ができるようになりました。 熱伝導テープは、耐熱、絶縁のカプトンテープに置き替えました。
他の方のレビュー記事
ESP32-C3-MINI-1 のステンシルを作る
ステンシルの発注
ESP32-C3-MINi-1 のフットプリントには、Espressif 公式のKiCadライブラリを使いました。
ESP32-C3-MINI-1 を適切に実装するために、ステンシルを作ろうと思いました。 はじめてステンシルを注文してみました。 ステンシルの注文自体は、JLCPCBでPCBと一緒にStencilにチェックを入れるだけです。
これに Polishing Process: Ethcing だけ変更しました。
ファイル自体は、KiCadのJLCPCB プラグインで出力されたファイルをそのままアップロードしました。 KiCadのF.Paste、P.Pasteがステンシルで使われるレイヤーだと思われるので、それが含まれていることだけを確認しました。
位置合わせの穴
ステンシルには位置合わせの穴を作りました。
穴のフットプリントにはこの記事を参考にしました。
PCBにドリルで穴開けされるようにNPTHを指定し、パッド形状、穴形状を円の2mmにしました。 それに、F.Past(はんだが乗る、つまりステンシルの穴)、F.Mask(レジストが乗らない)を指定しました。
出力したガーバーファイルの F.Paste で、この場所に穴があいていることを確認しました。
なお、この位置合わせ穴の部分はできあがった実装後の製品には乗せたくないため、マウスビッツで捨て板として切り離せるようにしました。
マウスビッツには、0.75mmピッチで直径0.5mmの穴を並べたものになっています。これで発注したところ、手で切断できるくらいの強度のマウスビッツができました。
ただ、後から改めて位置合わせ穴を使わずに位置合わせをしてみると、ESP32-C3-MINI-1 のランドであれば、充分大きいため目視で位置合わせ可能なように思います。 別途 RP2040 の 0.4mm ピッチの目視での位置合わせに挑戦して難しかったのですが、ESP32-C3-MINI-1 であれば問題なくできそうでした。
料金
ステンシル自体はとてもお安く$10.78 で発注できたのですが、送料が OCS Express でも $11.68 かかるようになります(サイズも大きいので)。 OCS Nep の $0.99 に慣れていると、高く感じます。
実際にリフローしてみた
実際に届いたので、作ってみました。届いたステンシルとPCBは期待通りのものでした。
もう一つ、ESP32-C3-MINI-1 の実装にトライ。はんだごてじゃできないやつ。 pic.twitter.com/R1tgUGhdTu
— 74th (@74th) June 10, 2023
位置合わせ用の穴を使ってPCBを位置合わせをし、マスキングテープで留めました。 位置合わせ用の穴があると、位置合わせが秒で終わります。
位置合わせホールがあると位置合わせが秒で終わる pic.twitter.com/dmPM9P0t81
— 74th (@74th) June 10, 2023
しかし、割とステンシルを剥がすときにずれる気がします。 そして、その上に正確に部品を載せるのが難しいです。
印刷したが、割と心配 pic.twitter.com/htkk3zgjHb
— 74th (@74th) June 10, 2023
なお、クリームはんだにはアリエクで安価で売っているものを利用しました。クリームはんだは常温保管できないため、冷蔵庫にチャック袋を2重にして補完しています。
リフローの進行度合いは、USBソケットのはんだの動きをみて、完了したのかを確認していました。
リフロー中に若干ずれているのがきになったため、ちょんちょんと位置をずらしたりしました。
途中ずれたの直したが大丈夫か、、、 pic.twitter.com/dAEdsOgkYU
— 74th (@74th) June 10, 2023
きちんと実装されているのか、見えないところでブリッジしていなか気になるのですが、テスターで2つのことを確認していました。
まずは、PCBのピンとGNDの抵抗値を測りました。モジュールとPCBが接続できているならば、モジュール内を通っていくらか抵抗値が計測できます。接続できていないならば∞Ωのままのはずです。
つぎに、PCBのピンとピンの間の抵抗値を測りました。見えないところでブリッジしているならば、0Ωが計測されるはずです。
TX、RXピンとGNDの間が∞Ωで繋がっていない気がしますが、それ以外のピンはある程度の抵抗値が計測されました。 モジュールとの接続はできていそうです。 また、ブリッジしていそうな所は見つかりませんでした。
引き続き、裏側の部品をはんだごてで実装し、組み立てました。USBを繋いだところ、ESP32-C3 の JTAG/USB Serial が認識し、正しく実装できていることが確認できました。
実装した。そして PC につなぐ。やった、内蔵のUSB Serial 認識した!!! pic.twitter.com/sgxOA0qjtK
— 74th (@74th) June 10, 2023
できたもの
ESP32-C3-MINI-1 でProMicroサイズの開発ボードを作ることができました。
Pro Micro と同じサイズ感の ESP32 ができた!!! pic.twitter.com/onRqzSUHDd
— 74th (@74th) June 10, 2023
いやー、ProMicroサイズかわいらしいです!!!
ステンシルにおまけに、PCBをつけたものを販売中
今回このPCBのステンシルとは別に、様々なフットプリントのステンシルを製造しました。
これを切り離した ESP32-C3-MINI-1 用のステンシルを booth で販売をはじめました。
こんな使い方の難しいアイテム買う人いるのかと思いましたが、なんと昨晩出品して既に2人の方が買われました!!! 出品した私が驚いています。
最後に
ぜひ、プリヒーターをなんとなく買った方の、活用の参考になればと思います。
appendix
ESP32-C3-MINI-1の入手
ESP32-C3-MINI-1 は LCSC で注文しました。在庫は潤沢とは言えないですが、$2.5 程度で購入可能です。
追加のステンシルの発注
この時、同時に様々なフットプリント用のステンシルを発注していました。都度ステンシルを発注するのはお金がかかるため、これを活用していきたいと思います。
初めて注文したステンシルが JLCPCB から届いた。
— 74th (@74th) June 10, 2023
RP2040 とか ESP32-C3-MINI-1 とか、詰め込んでみた。 pic.twitter.com/BqyHqS1FMj
この時作った RP2040、USB Type-Cソケット、ESP32-S3-WROOM-1 用のステンシルも、お裾分け商品として、booth にだしています。